日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G6 P-14
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G6:岩石・鉱物・鉱床学一般
隠岐島後に産する泥質変成岩中のヘルシナイトのZn含有量について
*増成 寛文
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抄録

【はじめに】スピネル(ヘルシナイト)は角閃岩相∼グラニュライト相の泥質変成岩にしばしば産することが知られている.隠岐島後の泥質変成岩においても,しばしばヘルシナイトの産出が報告されている(例えば,星野,1971,1973,1979,1981;鈴木,1981;Suzuki and Osakabe,1982).星野(1979)は珪線石に伴ってヘルシナイトの産出の報告および全岩化学組成をもとに原岩がラテライト質堆積岩であることを述べた.鈴木(1981)およびSuzuki and Osakabe(1982)は,ヘルシナイトの化学分析を行いZnO含有量の議論および飛騨変成帯の月ノ瀬地域との検討を行った.今回,ヘルシナイトとZnO含有量との間にいくつかの関係が認められた.そこで泥質片麻岩,泥質ミグマタイトおよび優白質岩の広域的な検討,ヘルシナイトのZnO含有量および化学組成を検討し簡単な記載を行う.【ヘルシナイトの産状および化学的特徴】ヘルシナイトは泥質片麻岩,泥質ミグマタイトおよび優白質岩に産し,アルミノ珪酸塩鉱物(珪線石,紅柱石),あるいはざくろ石に包有されて産する.ヘルシナイトは半自形∼他形で淡緑色∼濃緑色を呈し,ざくろ石に包有されて産するヘルシナイトは珪線石を伴う傾向がある.ヘルシナイトのXZn(=Zn/Fe+Mg+Zn)比は,アルミノ珪酸塩鉱物に包有されているヘルシナイトでは,ざくろ石に包有されているヘルシナイトに比べ,より高いXZn比を示す傾向が認められる.ヘルシナイトのZnO含有量はアルミノ珪酸塩鉱物では,だいたい4∼20wt.%程度,ざくろ石中では,だいたい2∼8wt.%程度である.泥質片麻岩,泥質ミグマタイト,優白質岩ともにアルミノ珪酸塩鉱物において高いZnO含有量を示す傾向が認められる.アルミノ珪酸塩鉱物に包有されているヘルシナイトにおいて高いZnO含有量を示すものは,同一試料内のざくろ石に包有されているヘルシナイトでも高いZnO含有量を示す特徴が認められる.また,高いZnO含有量を示すものはやや低いFeO含有量を示す.本結果は,鈴木(1981)およびSuzuki and Osakabe(1982)が報告しているヘルシナイトのZnO含有量よりもより高い傾向を示す.【全岩化学組成】星野(1979)はヘルシナイトを含有するコランダム含有泥質片麻岩の原岩がシリカに乏しく,アルミナ含有量の極めて高い岩石(ラテライト質堆積岩) であることを述べた.本地域の,ヘルシナイトを含有する泥質片麻岩はSiO2=71.15wt.%程度で,Al飽和度3.13と高い.一方,ざくろ石,ヘルシナイトを含有する泥質片麻岩および泥質ミグマタイトはSiO2=60.93∼78.57wt.%程度と広い組成幅をもち,Al飽和度1.62∼2.38程度である.さらにヘルシナイトを含有する優白質岩はSiO2=73.00∼81.01wt.%程度で,Al飽和度2.03∼2.70程度である.本試料では,必ずしもラテライト質堆積岩のような化学組成を示さない.

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© 2004 日本鉱物科学会
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