日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-18
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
高松-香川地域の隕石衝突構造の研究
*三浦 保範古賀 登
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抄録

1. はじめに:高松-・香川地域の埋没構造について、経緯と隕石衝突構造と衝突物質についてまとめる。
2. 火山列島日本における隕石衝突孔の問題点:火山地震列島では、隕石衝突孔は破壊されるので発見されにくいが、最も硬い花崗岩への(海底)衝突であれば残存すると考えられる。
3. 高松-香川地域における衝突構造研究:四国の高松・香川地域のクレーター状構造は、1)最初に重力異常図のデータ(金沢大学・河野・古本ら)により、筆者らの隕石衝突性データを参考にして、解説文を書かれたが、深い埋没構造や数十cmサイズの亀裂中の岩石は区別できないが、埋没して円形状構造であることを指摘した。2)地下の比抵抗データ(香川大学・長谷川)は、直線状の測定のため、数十cmサイズの亀裂貫入岩石が存在すると起源やリム構造が議論できない。地下深部の花崗岩基盤を保持した構造であると推定できる。しかし火山列島で破壊された埋没構造をそのまま火山性のコールドロン構造と解釈するのは適切でない。3)地下の割れ目と孔内の流れ堆積物に微小の火山岩・深成岩等が混入していることを筆者らが指摘した後、地表岩石の薄片観察とASEM分析だけからコールドロン状構造の論文報告(神戸大学、山田・佐藤)をした。これは、高松地域の埋没構造が不変と考え、この付近の花崗岩が破壊され、火山岩が混入していれば成り立たない。1,750mの深部掘削試料(岡氏提供)でも、微小の火山岩が混入しているのが分かった。コールドロン構造の推定に局部的に貫入した火山岩だけを使った報告(香川大学・長谷川)は、全体構造には適切な解釈でない。4)筆者らが発見した Fe-Ni-Co微粒子は衝突起源の証拠であり、同じものが衝突性の隕石衝突孔(リース、ミーン)、テクタイト(ラオス)、月面隕石から発見された。この地域は安山岩の熱で最初の衝突性ガラスが埋没変成して沸石化した堆積物の形成のため、これらのFe-Ni-Co微粒子が容易に散逸する組織である。Fe-Ni-Co微粒子が欠如した微細破片試料を使ってコールドロン構造と報告(香川大学・渡邊,長谷川; 2003年度地球惑星連合学会要旨集)したのは、Fe-Ni-Co微粒子が欠如した微細破片試料(深部掘削試料は所有者の依頼で全てFe-Ni微粒子を回収除去)であり解釈が適切でない。5)筆者らによる深部掘削試料のXRF分析から、1,750mにわたって花崗岩組成の衝突岩石であり、一部溶融した安山岩(玄武岩)もあった。6)500m以上落下陥没した火山性コールドロン構造の場合であれば,その円形構造の隙間に沿ってマグマの貫入した山地か丘陵を形成しているはずであるが見られないので、南部リムの上昇した小貫入岩だけを火山性陥没コールドロン構造の理由にするのは不適切な解釈である。7)この地域の花崗岩はすべて、二次的に機械的な圧縮破壊をうけた破壊構造を形成しているが、いわゆる大火山性構造ではない。
4. 高松-香川地域の破壊構造のまとめ:今回、衛星・地形・地下構造・重力異常図の詳細な解析の結果、日本列島形成(瀬戸内・五色台)時にNW-SE方向に圧縮されて楕円形に変形した隙間の多い南部にあとで安山岩小貫入岩体が貫入して、ほほ円形の構造(約4km)をしている。その証拠として,全ての花崗岩が細かく破壊されていること、地下掘削試料に混入岩石があること、地表(安山岩小貫入岩体が上昇時に持ち上がったタイプ)と地下の深部掘削1,750m試料中のメルト破砕岩から隕石起源Fe-Ni-Co含有粒子、花崗岩組成球粒と金属球粒(準結晶状固体)の両者から発見された。大陸の衝突岩と異なり、衝突後の埋没熱水作用で変質して沸石が形成され脆くなっている。衝撃変成石英組織は,大陸と同じく硬い花崗岩では形成しにくいので発見が少ないのが衝突性でない理由にはならない。衝撃変成石英組織が欧米の研究者でも確認された。

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© 2003 日本鉱物科学会
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