日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G7-05
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G7:火山及び火山岩
東北日本,鮮新統仙台層群大年寺層に狭在するテフラ層の岩石学的特徴
*高橋 友啓長橋 良隆柳沢 幸夫吉田 武義黒川 勝己
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抄録

 福島県太平洋沿岸には,海成の鮮新統である仙台層群大年寺層が分布する.大年寺層は珪藻化石層序に基づくと3.9-2Maである.本研究では,仙台層群大年寺層中に挟在する101層(134試料)のテフラ層を対象とし,既知の層序(柳沢,1990;久保ほか,1990;久保ほか,1994)に基づいて,岩相記載及び,記載岩石学的性質(全粒子組成・重鉱物組成・火山ガラスの形状)を明らかにした.また,火山ガラスのEDS分析を系統的に行い,98層(103試料)から1030点の分析結果を得た.これらのデータに基づいて,記載岩石学的特徴及び火山ガラス化学組成の層位的変化から,噴出マグマの岩石学的特徴を検討した.
大年寺層に挟在するテフラ層は,細粒ガラス質(中間型ガラス主体)で,普通角閃石を含むものが多い.火山ガラスの化学組成はSiO2量68.8-80.0wt.%で,K2O量により大きく三分(Low-K,Medium-K,High-K)される.このうち,High-K領域のテフラ層(8層)は,重鉱物組成で黒雲母を含むことなどから,中部日本の古飛騨山脈起源のテフラと推定される.このHigh-K領域のテフラ層を除いた,Medium-K領域とLow-K領域のテフラ層に関して,火山ガラス化学組成の層位的変化について検討すると,下位から上位へとK2O量が変化しない層準とK2O量が減少する層準が認められ,この減少傾向は5回繰り返していることが明らかになった.K2O量が変化しない層準のK2O量は,低い値(2-3wt.%程度)のものが複数層にわたり連続している.また,この層準では重鉱物組成の層位的変化は認められない.一方,減少傾向が確認される層準では,K2O量が1.5-4wt%の範囲で,バイモーダルな組成を示すもの,及びその範囲内である程度の幅を持つ組成を示すものが含まれる.これらは,K2O量の低い側(1.5-2.5wt.%)はあまり変化せず,K2O量の高い側(3-4wt.%)が上位へと減少している.また,K2O量の減少サイクルでは,重鉱物組成(特に普通角閃石と輝石の量比)が変化しており,K2O量の減少に伴う普通角閃石の減少,もしくは斜方輝石の増加が認められる.このことは,組成累帯したマグマ溜りの上から順に,マグマが噴出した可能性を示唆している.また,K2O量がほとんど変化しない時期のK2O量は,K2O量の減少傾向の認められる時期の低K2O量側の組成にほぼ一致している.したがって,高K2O量マグマの形成は,マグマ溜りの頂部のような特別な場所に一時的に起こったものと考えられる.

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© 2003 日本鉱物科学会
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