日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G5-02
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G5:初期地球と隕石
エンスタタイト及び普通コンドライト中の難揮発性包有物
*木村 眞比屋根 肇林 楊挺物井 晶
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抄録

炭素質コンドライト(以下,CC)中に典型的に見られる難揮発性包有物(以下,包有物)は年代の古さ,種々の同位体異常,高温凝縮を反映する鉱物組合せなどから,原始太陽系の最初期の過程を知るために極めて重要な物質と考えられている.これらの包有物は炭素質コンドライトばかりでなく,エンスタタイト・コンドライト(以下,EC)や普通コンドライト(以下,OC)からも少数が報告されてきている [1-3].われわれもSahara 97159(EH3)とY792947(H3)及びそのペアーと考えられる隕石から異常に多数の包有物を発見した [4, 5].ここでは,EC,OC中の包有物の岩石鉱物学的特徴,酸素同位体組成,微量元素組成につき報告する. Sahara 97159中に含まれる包有物の分布密度は22/cm2とEC中で最多である.構成主要鉱物はspinelで,さらにhibonite, perovskite, corundum, anorthite, Ca-rich pyroxeneが含まれる.また二次的変質鉱物としてnepheline, sodalite, albite, Ti-rich troilite, Ti-V-sulfideが認められる.二次的鉱物を考慮すると包有物の主要タイプはCC(特にCO)に見られるType A的及びSpinel-richなものであろう.ECの包有物の全岩組成もCCのそれと一致する. OCは25個の試料を調べたが,包有物の産出は稀で,平均分布密度は0.7/cm2である.ただし,前述のように多数の包有物を含むものもある [5].主要構成鉱物の特徴はSahara 97159中のものと同様に,spinelが主である.ただ,二次的鉱物の種類は異なり,nepheline, sodaliteに加えて,ilmenite, hedenbergiteが認められる.包有物のタイプはECやCCのそれと類似する. 包有物の初生的鉱物の酸素同位体組成はCC中のものと一致して,CCAM線上にプロットされる.一方,nephelineなどに富む部分では酸素同位体組成はTF線に近いところにプロットされる.Sahara 97159中の包有物のREE組成はCCで認められるGroup III的なパターンを示す. このようにECとOC中の包有物の岩石鉱物学的特徴,タイプ,全岩組成,酸素同位体組成,微量元素組成はCC中の包有物のそれらと極めて類似している.このことは全てのグループのコンドライト中の包有物が共通の起源を持つことを示唆している.一方,二次的変質鉱物の種類,組成はOCとCCでは共通しているが,ECでは異なっており,ECの包有物は二次的変質作用を還元的かつSiO2に富む環境で受けたと考えられる.このような環境はECの主要構成物質形成の場を反映しており,包有物の変質の場はもともとの形成の場とは異なっていたことが強く示唆される.References: [1] Bischoff and Keil (1984) GCA, 48, 693-709. [2] Fagan et al. (2000) MAPS, 35, 771-781, [3] Guan et al. (2000) EPSL, 181, 271-277, [4] Lin et al. (2003) GCA (in press). [5] Kimura et al. (2002) MAPS, 37, 1417-1434.

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© 2003 日本鉱物科学会
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