本研究では,中国地方東部及び北近畿地方に分布する超マフィック岩体由来の砕屑性クロムスピネルの化学的特徴を系統的に明らかにした.クロムスピネルのCr#は,関宮岩体で0.43~0.56,出石岩体で0.36~0.78,大江山岩体で0.43~0.69,若桜岩体で0.78~0.9,大島岩体で0.25~0.86を示した.つまり,若桜岩体のCr#は中国地方中部に露出するものよりも高い値を示した. また,大島岩体のCr#の組成範囲は中国地方中部地域三郡帯のものよりも広範囲を示した. 加えて関宮岩体及び大江山岩体からクロミタイトを採取・分析することができた. 関宮岩体及び大江山岩体から産したクロミタイト中のクロムスピネルのCr#は関宮岩体で0.38~0.46であり,大江山岩体で0.38~0.51であった.つまり北近畿地域のクロミタイト形成に関わったメルトは中国地域のものよりもAlに富んでいたといえる.