1937 年 4 巻 26 号 p. 745-752
飛行機の動的縱安定の特性は縱動搖の週期及び減衰度で規定し得るものと考へ,8種の飛行機に就てそれ等を飛行試驗で實測し,通常の飛行機に期待し得る安定がどの程度のものであるかを決めやうとしてみた.又,最も適度な動的安定の目安を得やうとして,實測した安定とその飛行機の一般操縱性に關する操縱者の意見との關係を求めてみやうと試みた.實測の結果に依ると,動搖の週期は速度と共に増加した.動搖の週期は,飛行機の異るに應じて,低速度では11sから23sの範圍に跨がり,高速度では23s乃至64sに亘つてゐた.減衰度と速度との間には明確な傾向は認められなかつた.無動力飛行では安定な飛行機も,動力飛行では不安定になると云ふ一般的傾向は注意を惹くものであつた.記録に現はれた最大の減衰度は,9s即ち約1/4週期の間に動搖の振幅が半減するに十分な位であつた.それ等の飛行機の操縱性に關する操縱者2名の意見は,見た處,縱動搖の週期と減衰度とで定義した安定特性には支配されてゐない樣であつた.