口腔・咽頭科
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パネルディスカッション2 深頸部膿瘍―予後診断と治療法の検討
医療大規模データ(DPC)の応用
~深頸部膿瘍の生命予後因子と経口摂取遅延因子の解析を通して~
阪上 智史日高 浩史八木 正夫岩井 大
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2023 年 36 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

近年,様々な業界で大規模データを利活用した取り組みが行われるようになってきている.このデータによる検討は,これまで確認が難しかった医療行為や知識の正確性の検証を可能とし,さらなる新知見を得る可能性がある.
こうした中で,これまで降下性縦隔炎を含めた深頸部膿瘍は,症例数が限られ単施設では十分な検討が困難であった.これに対し我々は医療の領域において利用可能な大規模データであるDiagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて日本全国の深頸部膿瘍4,949症例に関する解析を行った6
死亡退院と経口摂取遅延に関する因子を検討したところ,①年齢(75歳以上),②人工呼吸器使用,③抗菌薬長期間使用が統計学的に有意なリスク因子であると判明した.一方,同様に重症化因子として報告されてきた縦隔炎合併,複数回の排膿術は経口摂取遅延に対してのみ有意な因子であることが判明した6
以上のごとく,医療大規模データによる臨床解析は従来の報告を修正する可能性があり,こうした大規模データの利活用は今後の医療界の発展に重要ではないかと考えられる.

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© 2023 日本口腔・咽頭科学会
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