順天堂医学
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第24回都民公開講座《乳がん治療の最前線》
乳腺外科手術の進歩
杉山 和義
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2009 年 55 巻 3 号 p. 321-325

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抄録

乳癌は日本人女性が最も多く罹患し, 30歳から60歳までの死亡原因の第1位をも占めている. しかも, 依然として増加傾向にあり, その生涯有病率は20人に1人との試算もある, 一方, 芸能人ら著名人が乳癌の手術を自ら告白するなどして話題性にも事欠かない. 現在, 女性の最も関心がある疾患の1つとなった. さて, 乳癌の外科手術療法は1890年ごろにHalstedが, 乳癌根治術として乳房・大小胸筋・腋窩リンパ節群を一括して切除する方法を報告し, 以来世界的に標準術式として認識されてきた. 1950年ごろから手術の縮小化が見られ, 胸筋を温存する胸筋温存乳房切除術が始まり, 本邦においては1980年後半に全国集計でその数が逆転した. 1970年には乳腺部分切除 (乳房温存療法) が導入され, さらなる縮小手術と同時併用される放射線治療との集学的治療として普及した. この縮小化の流れは術式の変遷として表れ, 日本乳癌学会の調査でも2003年に乳房温存療法が胸筋温存乳房切除術を逆転し, 最も多い術式となった. また, 手術の前に化学療法を行い癌の縮小化を図り, 乳房温存手術を行う方法もある. 一方, リンパ節の切除の範囲も縮小化がなされ, センチネルリンパ節を同定, 陰性であれば腋窩リンパ節の郭清を省略する術式も可能となった. 乳癌の外科手術としては, 『縮小化』として推移してきた歴史がある. これらは乳癌に対する化学療法の進歩や放射線治療の関与など乳癌を集学的に治療すれば, 手術を縮小しても生存率に差はない. 順天堂大学病院は, 乳腺センターやがん治療センターを有しており, 心理面も含めて総合的な治療を心がけている.

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