順天堂医学
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特集 消化器疾患:最近のトピックス
ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃疾患
三輪 洋人佐藤 信紘
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1997 年 43 巻 1 号 p. 31-40

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抄録

胃・十二指腸潰瘍は一般の臨床医にとっても非常に身近な疾患である. 優れた抗潰瘍薬や的確な内視鏡止血により, 一旦生じた潰瘍の管理は容易になった. 抗潰瘍薬の継続を中止した後に高率に潰瘍の再発が認められることから, これら繰り返す潰瘍を“潰瘍症”と呼んでいるが, この潰瘍症からの離脱がヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori, 以下H. pylori) 感染症の除菌によって可能となった. わが国でも主としてH. pylori陽性の消化性潰瘍患者に対して除菌療法が行われるようになってきた. しかし, これに対しての診断・治療のプロトコール, あるいは除菌対象に関してのコンセンサスは得られておらず, これらの標準法の設定を試みた. まず, 13C呼気テストによるH. pylori診断の標準法の設定について検討した. その結果空腹時, 13C尿素100mgを用い, 座位で20分後の呼気を測定すれば, 検査の特異度・精度はそれぞれ98.4%・97.7%となり, この方法はH. pyloriの診断に有用であった. 有効な除菌療法の選択に関して, omeprazole・amoxicillin・clarithromycinを組み合わせた除菌療法の効果について検討した. その結果, この3剤の常用量の2週間投与で約90%の除菌率が得られることが示された. また, 除菌対象に関しては, H. pylori陽性の消化性潰瘍があげられるが, 症状のあるH. pylori陽性慢性胃炎患者 (H. pylori陽性NUD) の約8割が除菌によって症状の改善または消失をみたことから, これらH. pylori陽性NUD患者も除菌治療の対象となると考えられた.

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© 1997 順天堂医学会
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