順天堂医学
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原著
男性インスリン非依存性糖尿病患者におけるHeparin released platelet factor 4 (HR-PF4) の臨床的検討
望月 健太郎
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1993 年 39 巻 2 号 p. 235-240

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抄録

経静脈的にheparinを注入すると, 内皮細胞表面のheparan sulfateに結合しているplatelet factor4 (PF4) は, heparinと結合し流血中に遊離する. しかし, このheparin released PF4 (HR-PF4) の臨床的意義についてはまだ不明である. 今回, 糖尿病患者のHR-PF4値を測定し, 種々の臨床病態との関連について検討した. 対象は, インスリン非依存性糖尿病の男性患者124名と健常男性9名である. 採血後60U/kgのheparinを静注し15分後に採血し試料とした. 試料はEDTA. Theophyllin処理血液を4℃, 3000r. p. m. にて遠心分離し, 得られた血漿を一20℃にて保存し測定試料とした. 測定試料を用いてPF4を測定しHR-PF4値を算出して次の成績を得た. 1. 糖尿病群と健常群のHR-PF4値に有意差はなかった. 2. HR-PF4値と年齢・罹病期間との間にそれぞれ有意な相関を認めた (各r=0.265, P<0.05, r=0.243, P<0.005). 3. 年齢・罹病期間をmatchさせた細小血管症 (+) 群・ (-) 群のHR-PF4値を比較すると, (+) 群は (-) 群に比べ有意に高値を示した (p<0.05). 以上の結果より, HR-PF4値は網膜症ならびに腎症, すなわち細小血管症の進展度を投影していると考えられた.

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© 1993 順天堂医学会
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