自閉症児の頭部CTを検討しCT像上の変化を観察した. その変化を解剖学的に同定し, 自閉症の症状や程度を比較検討した. 症例はすべて瀬川小児神経学クリニックより紹介された自閉症児や, 〈自閉症様〉と書き表された自閉症を疑われた患児132例で, そのCTを観察して96例になんらかの変化が, 側脳室下角やその近傍の白質に認められた. すなわち, 側脳室下角の前方へ凸の限局性の拡大や深部白質の低吸収域である. 解剖学上成人の扁桃核は正中より30mm以内にあり, 外側には前交連束・鈎状束がある. この30mm線を基準線として病変を二つに分類してみた. グループIはこの基準線より外側に病変があるもの, グループIIは内側にあるものとした. 基準線の両側に病変の見られる例も1型に含めた. CT上所見の見られた96例中, I型は62例・II型は34例であった. 96例を自閉症児と自閉症とまだ確定されていない例に分け, 二つの分類に分けてみると扁桃核に主病変があるとみられるII型は自閉症児が28例・自閉症様患児が6例であり, 1型はそれぞれ33例・29例であった. これはより純粋な自閉症の傾向を示す例は扁桃核に病変があることが多いことを示している. 自閉症児の特徴である利き手の遅れや言語発達遅延とCT上の変化を検討したが, はっきりした関係は見出せなかった.