1985 年 31 巻 1 号 p. 1-7
わが国においても長寿化がすすむと同時に脳の老化にもとづく精神症状, なかでも痴呆についての諸問題がとりあげられるようになった. この論文では脳に出現する主要な老化性病変についての概要を述べ, ついでそれらの脳病変を基盤とする精神症状を, 老年痴呆を例として説明した. 即ちその頻度, 臨床症状, 及び痴呆に随伴する治療可能な種々の精神症状について解説した. 終りに老年痴呆の治療について, 各症状毎に対症的に用いる薬剤をあげ, ついで現在最も具体的に重要な問題であるケアに関してその実体と理念を説明した.