順天堂医学
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原著
生下時胎児臍帯血有核細胞の胎児 ヘモグロビン合成に及ぼすエリトロポエチンの影響
片岡 二郎
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1978 年 24 巻 1 号 p. 65-74

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抄録

ヒトの胎生期, および生下時のhemoglobinの主要構成を占めるfetal hemoglobin (Hb F) の産生調節機構は未だ明らかではない. しかしながらadult hemoglobin (Hb A) に関してはerythropoietin (ESF) がその合成を促進することが知られている. 今回, Hb Fの産生調節機構を検索する目的で, 満期生下時胎児から採取した臍帯血内有核細胞にESFを添加して培養を行ない, 培養液中に59FeCl3を加えてheme合成の指標とし, 同様に3H-leucineを加えてhemoglobin合成の指標とし, 臍帯血内有核細胞のheme合成, およびhemoglobin合成に対するESFの影響を検討した. その結果, (1) 72時間までの培養では, ESFの添加によりheme合成は経時的に促進すること, (2) 添加したESFの量とheme合成の程度との間には正の相関が認められたこと, (3) しかし, これらのheme合成の程度は臍帯血により個体差があること, (4) ESFの添加により, Hb F・Hb Aともに合成の促進が認められること, などの結果を得た. これらの結果は, ESFがHbF合成の産生調節に関与しているであろうこと, かつ, 臍帯血中にESFに反応する赤血球系幹細胞が存在している可能性を示唆している. また本実験に際して, Hb FとHb Aの分離に関してはZade-Oppenの方法で検討したが, 微量のHb Aの定量については問題がありさらに検討の余地が残された. 一方, Singer法によるHb Fの測定を行なったが, 採血から測定時までの経過時間が測定値に変動を与えることを再確認した.

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© 1978 順天堂医学会
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