順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
胃癌細胞診計量化に関する基礎的研究
藤井 佑二
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 24 巻 1 号 p. 32-48

詳細
抄録

胃癌の細胞診は, その細胞採取法の変遷と共に進歩してきたが, 細胞採取法が確立した現在, 診断学の不遍化が要求されてきた. しかしながら, 現在のところ細胞診は診断基準としての悪性指標があるにもかかわらず, 検者の主観に基づいて判定されている状態である. 診断に客観性を求めるためには, 判定基準を客観的に評価することが必要であり, そこに細胞診の計量化の要求が生じた. 一方, 細胞診の普及に伴う検体の増加に従って, 細胞診の自動化が重要な問題として取り上げられ, ここにも細胞診の計量化の必要性が生じた. そこで胃癌細胞診の計量化に関する基礎的研究を目的として次の研究を行なった. 顕微分光光度計を用いてスキャンニング法を応用し, 核径, クロマチン量, クロマチンパターンの三つをパラメーターとして, 明らかに良性細胞であるClassIの細胞160個と, 明らかに悪性細胞であるClassVの細胞160個計320個につき計測し, それぞれのパラメーターが細胞診の計量化のパラメーターとして適正であるか, どうかにつき検討した. その結果三つのパラメーターによる成績はそれぞれ非常に高い診断率を表わし, それぞれが優秀なパラメーターであることを示した. 一つのパラメーターで誤診した例でも, 二つのパラメーターで重複して誤診した例は少なく, 320個中1個のみが重複誤診した. しかし, 三つのパラメーターが全部で重複誤診した例は認められなかった. そのことから三つのパラメーターはそれぞれ独自の意味を持ち, 核径, クロマチン量, クロマチンパターンともに必要不可欠のものであることを証明した.

著者関連情報
© 1978 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top