2021 年 29 巻 p. 30-35
スラリーの塗布膜成形非常に幅広い分野で利用されているが,通常は成形性向上および柔軟性付与のため大量の可塑剤を添加するなどしており,製品品質およびCO2排出量への影響が懸念されてきた.本研究では,高分子電解質分散剤を用いて一旦粒子を良分散状態としたのち,軟凝集添加剤として両末端に高分子分散剤とは逆の電荷を持つ直鎖状の分子を添加して粒子表面の高分子分散剤をイオン架橋させることで,静置時は降伏値を持つ緩いゲルを形成し,軽い震盪で容易に流動状態へと移行し,時間が経過すれば再度ゲル状態に戻るという可逆性を有した軟凝集性スラリーの調製に成功した.このスラリーを用いてドクターブレード法によりシート成形を行ったところ,適切な軟凝集添加剤および添加量とすることで,従来法のような多量の可塑剤を添加することなく均一なシートの成形に成功した.さらに,得られたシートは折り曲げても割れることのない高い柔軟性を有していた.