セメント硬化体に対する乾燥収縮低減剤(SRA)の作用機構を解明する新たな知見を得るために、練混ぜ水に乾燥収縮低減剤を添加し、2H NMRを用いて3種の相対湿度(以下RH)条件下で乾燥した白色セメント硬化体中の、重水素原子の運動性について検討した。2H NMRスペクトルの解析結果から、キャピラリーの水分子はSRAの添加によって運動性が低下しているが、それによってキャピラリーからの水の逸散に変化はないこと、カルシウムシリケートハイドレート(C-S-H)中の3種の細孔であるinter layer、small gel pore、large gel poreのうち、SRAはlarge gel poreのみに存在することが示された。この結果はSRAがlarge gel pore内でC-S-Hの構造を保持することによって乾燥収縮を低減するとした説を支持するものである。