1988 年 32 巻 1 号 p. 31-36
ツマグロヨコバイの吸汁加害に対するイネの生理的反応を穂への放飼実験により明らかにし,イネの出穂期以降における被害程度の差異を品種の早晩生による登熟パターンの違いから説明した。
1) 穂を加害した場合,籾や護穎よりも枝梗,穂軸のような養水分や同化産物の通過部位からの吸汁の頻度が高かった。
2) 吸汁活動によりイネの水分代謝が活発化し,かつ節間の蓄積澱粉が消失した。
3) イネの出穂期の早晩あるいは生育ステージにより,穂への吸汁加害の影響は異なった。登熟日数が短い早生種では,出穂直後の吸汁加害による同化産物の転流阻害の影響が成熟期になっても回復せず減収した。一方,登熟日数が長い中生種では,同化産物の損失分が登熟後期に補償されたために減収しなかった。
4) 直接吸汁害に対する要防除密度は,登熟パターンを考慮して品種の早晩生に区分して設定されるべきであると提案した。