日本応用動物昆虫学会誌
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越冬寄主上のワタアブラムシ胎生虫の生態および形態
稲泉 三丸
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1986 年 30 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

1) 冬季におけるワタアブラムシの胎生雌の形態的特徴,モルフ別個体数比率,出生時期,生存期間,世代数などを知る目的で,1983∼1984年および1984∼1985年の2冬季シーズンにおいて,宇都宮市のナズナ上の個体について野外調査と個体別飼育を行った。
2) 冬季の野外個体群には夏季と同様,無翅および有翅胎生雌虫の幼・成虫が見られるが,2, 3月には有翅の成虫はほとんど見られなくなる。また,2月には若齢幼虫の,3月には中・老齢幼虫の比率が高い。
3) 冬季個体は体表が白っぽいワックスでおおわれ,触角,角状管,尾片,腿節,脛節などの付属器は短小で,体形は球形に近くなる。これらの特徴は最も寒い2月の個体に顕著に現われる。
4) 本種は,宇都宮地方では12∼3月の冬季にほぼ2世代を送っており,この間に野外で見られる無翅胎生雌の成虫は11月上旬∼12月中旬に生まれ,11月下旬∼1月下旬にかけて成虫に生育した個体であると推定された。
5) 2, 3月の気温が平年より低温の年には,第2および第3世代幼虫の死亡率が高いほか,第2世代成虫の産子数も著しく少なく,それらが4, 5月における早春の個体群確立に著しい影響を与えるものと推定された。

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