日本応用動物昆虫学会誌
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クワシロカイガラムシの生殖について
安田 壮平
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1981 年 25 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

クワシロカイガラムシの生殖について,その未交尾雌の卵巣の発育不全,脱介殻による裸状寄生,白色絹糸様ろう質物の分泌などの異常現象を明らかにし,両性生殖を確認した。その結果の大要はつぎのとおりである。
(1) 卵巣の発育を第1期から第5期まで段階的に区別し,卵巣卵の成熟過程を明らかにした。また,越冬雌成虫の産卵期について,体重の増加と卵巣の発育の間には高い相関関係が認められた。
(2) 未交尾雌の卵巣卵は,卵巣の発育段階の第3期ごろから発育が停止し,その後,次第に萎縮・変形して黒色の桑実状となり,ついに崩潰する。また,このような異常個体は,まず体躯が介殻外に逸脱して裸状となり,口針の挿入部位を中心にして円を画くごとく移動する。さらに,白色絹糸様のろう質物を分泌し,一見して真綿様の介殻を形成する。
(3) 交尾および産卵は,成虫の性成熟度(未成熟・成熟・老熟)とは無関係に,生育の初期から末期に至る長期間認められた。しかし,産卵能力は成虫の経過日数(性成熟度)によって異なっていて,成虫初期(性未熟期)および成虫後期(性老熟期)に比べて成虫中期(性成熟期)が最も高く,ついで成虫後期に高い峰型の傾向が認められた。
(4) 本種の生殖について,その未交尾雌の卵巣の発育不全,脱介殻による裸状寄生,白色絹糸様のろう質物の分泌などの異常を観察し,両性生殖によって繁殖することを認めた。また,単為生殖の生態的変種については明らかでなく,今後とも検討を要する問題であろう。

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