1974 年 18 巻 2 号 p. 59-64
ドウガネブイブイのふ化直後の幼虫の密度を変え,屋外の植木鉢中でほとんど全幼虫期間にわたって飼育を行なった。その間,定期的に幼虫の個体数の変化を調査した。その結果,初期幼虫密度がその後の幼虫の生存に大きな影響をあたえることが明らかになった。
すなわち,幼虫生存率の経時的変化を見ると,初期密度の低い区では直線状にゆるやかに低下し,実験終了時にも高い生存率を維持していたのに対し,高密度区では実験の初期に急激な生存率の低下が見られ,最終的な値も非常に低かった。
幼虫密度も同様の変化を示したが,実験終了時にはいずれの密度区もほぼ一定の密度に収れんする傾向が認められたことから,幼虫生存限界密度が存在するように思われた。さらに最終時の幼虫密度を最大にする最適初期密度の存在も推測された。
このような生存率,密度の低下を引き起こした最大の死亡要因は幼虫初期にみられる密度依存性の強いものであって,具体的には幼虫間の共食いによるものと考えられた。