高分子化學
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ナイロン6の結晶変態に関する研究
第3報ナイロン6の球晶とその変形に関する光学的研究
相原 忠義吉崎 修長井 栄一
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1963 年 20 巻 219 号 p. 450-455

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抄録

大口径ノズルを用いて溶融紡糸した未延伸ナイロン6テグスには球晶の発生が見られるが, それらの球晶は半径方向に正の複屈折度を示し, X線測定によりγ 型の結晶構造をもつことが確かめられた。テグスを延伸し種々の方向から観察すると, 球晶はダ円体あるいはシリンダー状に変形されており, 延伸方向に垂直な円形断面においては変形前に比し半径方向により大なる複屈折度を示すことが認められた。この場合分子鎖は長軸方向に配列し, α 型の結晶構造に転移している。結晶構造がそれぞれα 型, γ 型であるナイロン6の配向フィルムについて測定した3軸方向の屈折率の値を用い, 各種ポリマーの球晶に関する一般的な知見に基いて以上の事実を解析した。その結果, 分子鎖が球晶の接線方向にあって水素結合の方向が半径方向と一致しているような構造をもっていた7型結晶構造の球晶は延伸により変形された後も水素結合がシリンゲーの半径方向に保たれていて, すでに報告したγ型結晶構造をもっているフィルムや単結晶における延伸機構と本質的に同じであることが結論される。

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