1962 年 19 巻 204 号 p. 197-204
リグニンSBR共沈体を加熱するとリグニンの補強性が著しく増大する。この加熱により共沈体中にベンゼン不溶のSBRゲルが生成するが, リグニンがSBRに対して老化防止作用のあることがわかったので, このゲル生成は, リグニンーSBR間の結合によるものであると推定した。しかし, 共沈体の赤外線吸収スヘクトルには, なんらの変化も見られなかった。また, 共沈体加硫物のベンゼン膨潤度から共沈体中の網目密度を算出する方法で, 加熱による網目密度形成に対する寄与を検討した結果, 加硫時のそれに匹敵するほどに大きな影響をもつことがわかった。一方, ゲル生成量の温度による変化から, リグニンーSBR結合反応の活性化エネルギーが約16kcal/molと算出された。これらの結果を総合して, リグニンーSBR間の結合反応は, リグニンのSBRに対する老化防止作用と互に関連性のあることを推定した。