2006 年 63 巻 6 号 p. 412-418
カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム (CTBN) とエポキシ樹脂 (ビスフェノールAジグリシジルエーテル) を反応ブレンドした樹脂 (CTBN含量 60wt%) について, CTBNのアクリロニトリル (AN) 共重合比が樹脂の動的粘弾性や制振性に及ぼす影響を評価した. AN共重合比が10~18 mol%の場合, ゴムリッチ連続相, エポキシリッチ分散相からなるミクロ相分離構造が硬化中に形成され, この樹脂を用いた制振鋼板の損失係数 (η) には著しい温度・周波数依存性があった. 一方, 同組成にてAN共重合比を26 mol%に増加させた場合, CTBN/エポキシ両成分の相溶性が向上し, 硬化樹脂には明確な相分離構造が認められなかった. 樹脂の損失正接 (tan δ) の温度依存性は小さくなり, その制振鋼板は広い温度・周波数領域にてη>0.1となる高制振性を発現した. また, 同樹脂はせん断・はく離の両応力モードにて高い接着強さを発現した. ηの温度依存性や比較樹脂組成間序列は, 樹脂のtan δとせん断弾性率, 鋼板の形状因子をパラメータとするRoss-Unger-Kerwinモデルにより説明できる.