2000 年 57 巻 4 号 p. 188-197
水素結合により自己組織化した錯体超構造の機能発現を検討した. 相補的な水素結合部位を有するビグアニダド配位子 (BG) とビオルル酸配位子 (VA) を用いた [Co (bg) 3 ] 錯体と [Co (va) 3 ] 錯体の1: 1の反応により, 配位子間プロトン移動を伴う三重水素結合が形成された. この水素結合系は中心金属から3方向に展開した3次元的な錯体ネットワーク構造を形成し, その内部空孔に水を強く捕捉した. また, エチレンジビグアニダド (ENBG) を配位子とする [Mn (enbg) (OH) (H2O)] 錯体と, これと相補的三重水素結合を形成する [Cu (va) 2 ] 錯体が自己組織化した系では, Cu (II) +Mn (III) →Cu (I) +Mn (IV) の酸化還元反応が確認できた. Mn錯体とCu錯体は配位子間三重水素結合によってテープ状構造を形成し, このテープ間でマンガンと銅が架橋したMn-O-Cuを経由して電子が移動したと考えられる. これは錯体の自己組織化構造で電子移動を発現した非常に興味深い結果である.