グリコリドの開環重合により高分子量ポリグリコール酸を合成し, その末端水酸基を無水酢酸により封ずることにより安定化した. この重合体の熱的性質及びレオロジカルな性質をDTAとずり試験とにより測定した. DTA曲線からは転移温度がわかっただけであった (Tg=37℃及びTm=224℃). しかし, ずり粘度の測定結果から異常に大きな流動の見掛活性化エネルギー32kcal/molが得られた. このことから回転粘度計内で熱分解が起こったものと考えられる. 実験用溶融紡糸機を用いて240℃で安定な紡糸ができ, 均一な繊維が得られた. 65℃の水中で延伸し, 190℃で10分間熱処理した後, 強度1GPa弾性率14GPaの繊維を37℃に保った擬似人工体液 (PECF; pHが8.2の緩衝溶液), 生理食塩水, 蒸留水あるいはエタノール中でin vitro加水分解を試みた. 水系溶液中では, まず表面に亀裂が生じ, この亀裂が繊維表面全体に広がり, 最後に多くの細片が繊維から脱落し細化が起こる. 引張特性も同様に変化した. しかし, エタノール中では, 外観及び力学的性質ともまったく変化を示さなかった.