1980 年 37 巻 10 号 p. 671-676
ポーリエチレングリコール (PEG, 平均分子量3,000) の末端アミノ化によってNH2-PEGを合成し, DNP法で定量した. このポリマーとシステイン (Cys) から酸アミド結合でCys-NH-PEGを合成した後, Mo2O2 (μ-S) 22+イオンとの反応によりMo2O2 (μ-S) 2 (cys-NH-PEG) 2 (cys=システイン, 配位に関与している残基を小文宇で示す) を合成した. この錯体はテトラヒドロフラン (THF) に可溶であり, また水にも可溶であった. 赤外, 可視, CDスペクトルの測定から, システイン部分はSNリガンドとしてモリブデンに結合している. また, このNH2-PEGから, Bocで保護したアミノ酸を使い, 段階的にジベプチドが結合したAla-Cys-NH-PEGを合成した. このべプチドからMo2O2 (μ-S) 2 (ala-cys-NH-PEG) 2を合成し, THF中で可視およびCDスペクトルを測定した. これらの錯体はPEGの親水性のために水に良く溶けるので, 金属酵素のモデルとして有用である.