1980 年 37 巻 5 号 p. 383-387
エチレンービニルアルコール共重合体の水素結合に関する知見を得る目的で皮膜試料の近赤外吸収スペクトルを検討した. 1.35~1.69μm付近の吸収を分離, 解析した結果, OHによる吸収の吸光係数はエチレンの共重合でやや増大するようであるが, 水素結合状態にはよらないと考えられる. 1.41, 1.49および1.58μm付近の吸収を遊離, 分子内および分子間水素結合によるものとして定重した. 通常のポリビニルアルコールの分子内, 分子間水素結合量の比は約1: 1で, この比はエチレン量とともに若干増大する. 遊離のOHの絶対量はエチレンmol%に対して上に凸な曲線を描き, エチレン75mol%付近で極大値を示すのに対し, 分子内および分子間水素結合はエチレンのmol%とともにほぼ直線的に低下し, エチレン75mol%付近で3者がほぼ同一レベルになることを認めた. なお, 延伸による水素結合状態の変化は小さいようである.