1977 年 34 巻 11 号 p. 771-777
真性粘菌Physarum polycephalumの変形体の物質認識機能に関連した, 粘菌表面膜の電気化学的性質中, クーロン力が支配的な部分が液体イオン交換膜 (オレイン酸マグネシウム+1-デカノール系) でシミュレートできることを見いだした. すなわち, (1) 起電力の対数濃度依存性 (∂E/∂logC) がカチオンの価数zによらずほぼ20mVであること, (2) 起電力 (=膜電位+定数) を大きく変化させるのに必要な最低濃度Cth (粘菌の場合には走化性を引き起こす最低濃度に等しい) がZ-6に比例して減少すること, (3) Cthの温度依存性が与えた物質によらず一定であることがシミュレートできた. これはクーロン力が支配的な現象に関しては, 粘菌表面膜もイオン交換膜と同じように振る舞うことを示している. また, 本研究結果は粘菌表面膜の電気化学的性質が主として表面膜-外液界面現象として理解されることを示唆した.