天理医学紀要
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症例報告
子宮腺筋症核出術後瘢痕部妊娠に対し,メトトレキサート投与による人工流産後に経頸管トロッカー法にて妊娠組織を摘出し子宮を温存し得た1 例
金本 巨万大須賀 拓真山中 冴鈴木 悠髙橋 直子松原 慕慶三木 通保藤原 潔
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2018 年 21 巻 1 号 p. 19-29

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抄録

子宮腺筋症の核出は筋層の欠損を招く恐れがあるため,術後の妊娠は子宮破裂をきたすリスクがある.症例は40 歳女性,未経産,2 年前に子宮腺筋症核出の既往あり.不妊クリニックにて,体外受精にて妊娠成立.妊娠7 週時の診察にて胎嚢周囲の子宮筋層が高度に菲薄化しており当科を紹介受診.経腟超音波検査にて胎嚢の前壁筋層内への埋没,週数相当の胎児とその心拍が確認された.胎嚢外側の子宮筋層は2.4 mm と薄く,絨毛の位置から瘢痕部への着床が疑われ,周囲は血管が顕著に発達していた.瘢痕部妊娠のため妊娠継続は危険と判断し,十分なインフォームドコンセントのもと保存的加療の方針となり,メトトレキサートを第1 回目は胎嚢内に,以後は全身投与した.しかし,肝機能異常と血清hCG 値の再上昇が認められたため,妊娠組織の手術摘出を行う方針とした.レゼクトスコープ下では妊娠組織の切除が困難であったので,当科で考案した経頸管トロッカー法を用いた.まず子宮頸管拡張を追加して腹腔鏡手術用12 mm カメラトロッカーを挿入し,そこから5 mm 硬性鏡,腹腔鏡手術用の把持鉗子と吸引送水管を同時に操作して,筋層内の妊娠組織を直接的に把持,摘出することができ,結果的に子宮の温存が可能であった.本手法では,子宮鏡下で不可能な筋層に対する操作が,同時に使用する複数の鉗子操作によって実施可能であった.

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© 2018 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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