2010 年 63 巻 11 号 p. 861-865
蝋製乳頭管拡張器具(器具A),シリコン製導乳管(器具B)および獣腸線製乳頭拡張器具(器具C)を8頭のホルスタイン種非泌乳牛の乳頭に3日間あるいは9日間留置した. さらに4頭の泌乳牛に器具AとBを7日間留置した. 非泌乳牛では内視鏡検査を3日ごとに実施した. 器具の留置終了時の剖検で乳頭を採取し,病理組織検査を行った. 内視鏡検査では器具BとC を留置した乳頭では留置3日後から乳頭管に角質層の剝離や管腔の拡張,フルステンベルグロゼット(FR)の出血と粘膜の粗造化が観察された. 病理組織検査ではこれらの部位には粘膜上皮の壊死,白血球浸潤,線維増生があった. いっぽう,器具Aの留置では非泌乳牛および泌乳牛ともにFRに少数のリンパ球が浸潤するだけであった. 以上の結果から器具Aが乳頭粘膜に刺激の少ない器具であると考えられた.