日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
反芻動物の低マグネシウム血症に関する実験的研究 : V. マグネシウム, カルシウム組成の異なる飼料を切りかえ給与したときの羊のリン代謝と血漿上皮小体ホルモン濃度
志賀 瓏郎小湊 昭篠崎 謙一
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 42 巻 2 号 p. 221-230

詳細
抄録

反芻動物におけるMg代謝と上皮小体ホルモン(PTH)の関係を明らかにするため, 4頭の成雌羊に対し, MgとCaの割合が異なる三種の人工飼料を順次切りかえ給与し, 血漿PTH濃度とMg, CaおよびPの代謝を調べた. 通常飼料から低Mg・低Ca飼料に切りかえると, 各動物とも血漿PTH濃度は低下した. 低Mg・低Ca状態でCaのみを補給すると, 1頭の老齢(8歳)羊は, 血漿PTH濃度が著しく低下し, 2日目にテニターを起こし, 4日目に起立不能および採食不能の状態になった. 5日目以降, 血漿PTH濃度は著明に上昇したが, 7日目に死亡した. 他の3頭の血漿PTH濃度は, 前半の4日間は低いレベルで上下し, 5日目以降, 食欲の減退とともに上昇し, 7日目以降食欲の回復に伴ない再び低下した. 低Mg状態下でMgを補給すると, 血清Mg濃度の上昇とともに血漿PTH濃度は著しく低下し, 同時に, 尿中MgとCa排泄量の増加と尿中P排泄量の減少が認められた. 以上の成績から, Mgの欠乏, または一過性過剰吸収は, Caの摂取量に関係なく, 血漿PTH濃度を低下させる. また, 飼料中のMgとCaの顕著なアンバランスは, 老齢羊でみられたように, 上皮小体機能を低下させ, 低Mg血症性テタニーを引き起す可能性があることが示唆された. 謝辞: 稿を終えるにあたり, ウシ上皮小体ホルモンの抗血清の御提供を賜った農林水産省家畜衛生試験場林 光昭氏, ならびに同北海道支場佐伯隆清氏に深謝する.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top