1959 年 21 巻 5 号 p. 299-306
1) 疲労によって神経-筋系に如何様な機能的変化が起るかということを調べるために筋電図学的な研究を行った. 犬を後肢のみで長時間起立させることによって後肢の筋を疲労させることを試み, M.gastrocnemiusから導出した筋の放電パタンの変化を経時的に観察記録した. 同時に単一NMUの放電を記録し, 方式に従って解析した. 2) 放電叢ははじめ均等に散布するが, やがて群化し始め, ついに明瞭な群化放電 Grouping Voltage に移行する. 動物の態度からこれが筋の疲労によるものと解釈した. 3) 単一NMUの放電間隔時系列の緩慢な動揺は, はじめ変動の幅が狭く, なめらかであるが, 群化放電の発現とともに変動の幅が増大し, 不規則になってくることが認められた. 4) 不規則な変動は頭初狭い範囲におさえられているが, やがて次第に増大し, 群化放電の発現するころは極めて大きな範囲に拡大した. 5) 訓練犬の緩慢な動揺は長時間の後肢起立によって変動の幅がわずかに増大するが, 未訓練犬のような大きな動揺は現われなかった. 不規則な変動の振幅の増加も未訓練犬に比べてはるかに小さく, しかも変化の現われる時期が著しく遅かった.