2002 年 76 巻 10 号 p. 962-969
筆者らはすでに,多くのモノテルペノイドを母核とした生物活性物質の合成を行い,その生物活性の発現に関与していると思われるチオエステル基およびフラン環に注目している.そこで,本研究ではコーヒーの香気成分であるフルフリルメルカプタンを用い,数種のモノテルペニルカルボン酸との縮合反応を行い,チオエステル化合物の合成を行った.また,活性発現の相違について,類似骨格をもっアミド化合物の合成も行い,それぞれ得られた化合物について,殺ダニ活性試験および殺虫活性試験を実施し,生物活性の比較を行い,以下の結果を得ることができた.
(1) チオエステル化合物のみに活性発現が確認され,ケナガコナダニに対しては化合物2D~6Dおよび12D~15Dは薬剤濃度0.053~0.097g/m2の値(LC50)が得られ,コナヒョウヒダニに対しては化合物4D, 6D,および13D~15Dは薬剤濃度0.221~0.146g/m2の値(LC50)が得られ非常に優れた殺ダニ活性を発現することを見いだすことができた.
(2) チオエステル化合物ID~16Dは衛生害虫および不快害虫,特に屋内塵性ダニ類に対して幅広い殺ダニ効力および殺虫効力を有し,しかも低薬量で極めて優れた駆除効果を示すことが認められた.