日本農芸化学会誌
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縮合リン酸塩の抗菌作用に対する大腸菌外膜主要蛋白質の役割
須田 郁夫須田 真理渡辺 忠雄堤 将和
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1989 年 63 巻 5 号 p. 991-998

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抄録

(1) PPに対する感受性から,E. coli JE1011とNS mutantsはPP抵抗性株(JE1011, NS3, NS5), PP感受性株(NS2, NS4, NS6)および増殖培地の影響を受けやすいPP感受性変動株(NS1)に分けられた.
(2) PP感受性株では外膜matrix蛋白質(OmpF, OmpC)の含量が減少していた.また浸透圧ショックによりその処理菌はPPに対して感受性となったが,その際菌からのOmpFの遊離が見られた.これらの事実はmatrix蛋白質の減少がPP感受性の増加と関連していることを示唆した.
(3) 未加熱のmatrix蛋白質(OmpF*, OmpC*)を含む外膜がPPで処理されたとき,これら蛋白質はSDS-ゲル電気泳動上での移動度を変えた.またmatrix蛋白質のうちとくにOmpF*のほうがPPの作用を受けやすかった.
(4) PP感受性株および浸透圧ショック処理菌の糖・有機酸・培地成分の酸化はPPにより阻害された.この現象はPP抵抗性株およびNS1では観察されなかった.さらにPPによるこの阻害は基質の外膜透過障害に起因していると考えられた.
(5) NS2のコハク酸酸化におけるPP間での阻害効果はPPによる未加熱matrix蛋白質の移動度の変化およびPP感受性株でのPP感受性に相関性を示した.
(6) 以上の結果はPPが種々の親水性低分子物質の外膜透過に関与しているmatrix蛋白質に対して作用できることを示唆した.そこで著者らはmatrix蛋白質の減少が生じているPP感受性株でのPPによる増殖阻害効果は,そのmatrix蛋白質にPPがさらに作用するために,菌の生育に必要な栄養物が不足して引き起こされたのだろうと推察した.

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