1972 年 46 巻 12 号 p. 613-618
(1)市販の甘藷,馬鈴薯,タピオカ,小麦,トウモロコシ,および米の各澱粉について,その内部脂肪酸の含有量および組成を比較した.その結果,脂肪酸の含有量は,いわゆる澱粉尺の順序とほぼ一致しており,またその組成は,含有量の少ないものほどパルミチン酸に富み,含有量の多いものはリノール酸に富む一連の傾向を示した.
(2)次に,これらの澱粉の内部脂肪酸の組成と,それぞれの澱粉を含む組織の脂質の脂肪酸組成とを比較すると,澱粉粒子中には,いずれもパルミチン酸の割合が高いように思われた.
(3)これらの澱粉粒子に6種類の脂肪酸を導入し,澱粉および脂肪酸の種類による違いを比較した.その結果は,澱粉の種類によって脂肪酸のとりこみ量や,その組成割合はほとんど変わらなかった.一方,脂肪酸の種類によっては,とりこまれる量にかなりの差異がみられた.すなわち,飽和脂肪酸ではパルミチン酸が最も多くとりこまれ,また不飽和度の増加に伴って,急速にとりこまれる量は減少した.