日本農芸化学会誌
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貝類外套膜外液の生化学的研究(第1報)
アサリ外套膜外液のホスファターゼについて
石原 忠保田 正人
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1968 年 42 巻 9 号 p. 553-557

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抄録

これまで酵素学的考察の行なわれていない貝類の外套膜外液に数種の酵素が存在することを確認した.そのうちアサリのボスファターゼについて内臓部に存在するものとの比較において次の結果をえ,内臓部とは異なる性質をもったものであることを知った.
(1) アサリの各部位から抽出した粗酵素液中にはpH 4.1およびpH 9.7に至適pHを持つ,酸性およびアルカリ性ホスファターゼが存在するが,外套膜外液中には酸性ホスファターゼは全く見られず,pH 7.7に至適PHを持つ中性に近いアルカリ性ホスファターゼのみが存在した.
(2) 外套膜外液のホスファターゼは内臓部のアルカリ性ホスファターゼと同様,基質特異性としてPh-Pをよく分解するが,その程度は外套膜外液の方がはるかに強かった.
(3) 外套膜外液のホスファターゼと内臓部のアルカリ性ホスファターゼは10-3MのEDTAにより阻害され,Mg2+,Ca2+,Ba2+でわずかに活性化される点は一致するが,Zn2+,Mn2+,Co2+によっては,前者では活性化され,後者は逆に阻害された.このうちCo-6による外套膜外液酵素の活性化は著しい.
(4) グリシン,アラニンは内臓のアルカリ性ボスファターゼを阻害するが,外套膜外液のホスファターゼには影響をあたえない.
(5) 外套膜外液のボスファターゼは凍結乾燥により著しく活性が低下するが,処理前後のCo2+の添加は保護および活性化に効果を示した.また加熱による失活に対してもCo2+の添加は有効であった.
(6)pHとCo2+添加濃度との関係は,濃度により至適pHが変化する,活性化はpH 7.7では10-4Mが最も強いが,pH 8.7では10-3MとpHによってその傾向は変わる.

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