日本農芸化学会誌
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細寒天の褐変現象について
林 金雄野中 清
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1962 年 36 巻 8 号 p. 684-689

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抄録

細寒天の褐変現象を追究し次の結果を得た.
(1) 褐変寒天には15~25%の水溶性物質が含まれていて,その水溶性物質中にはアミノ酸,遊離糖,多糖類,灰分及び褐色物質等が含まれている.アミノ酸としてはシスチン,アルギニン,グルタミン酸アスパラギン酸,スレオニン,アスパラギン及びアラニンの存在を推定し,遊離糖としてはガラクトース及びグルクロン酸の存在を認め,また多糖類成分としてはガラクトース,グルクロン酸及びキシロースを検出した.
(2) 褐変度は水溶性物質の含有量の多いものほど高く,水溶性物質中特に含窒素化合物と炭水化物とが褐変化の原因であり,無機物中鉄も変色に関与していると推定される.
(3) 寒天中に含窒素化合物と炭水化物の多いものほど,高温多湿の条件下で褐変度が大であることを認めた.褐変化に伴なって還元能が増加する.
(4) 精製した寒天にアミノ酸及び糖の混合液を添加して,各種湿度で保存して褐変化の起ることを認めた.
(5) アク水の成分を分析したところ,上記水溶性物質について得た結果と全く一致した.
(6) 乳白寒天は変色しにくいが,これは普通寒天よりも,上記水溶性物質の含有量が著しく少ないことに起因すると思われる.
(7) 寒天に水溶性物質が多く含まれているほど,その水分含有量は高い傾向が認められる.

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