1962 年 36 巻 4 号 p. 364-369
ギ酸からカプリル酸までの低級脂肪酸を分離確認するために,脂肪酸をメチルエステルの形にしてガスクロマト分析を行ない,その各成分ピークの分離能に及ぼすカラム充填剤の種類,固定液相の担持率,キャリアーガスの種類と流速,カラム恒温槽と試料注入室の温度などの影響を検索した.分離能の優劣は保持時間またはその対数,分解度及び理論段数によって判定した.
その結果,低級脂肪酸メチルエステルの分離にはCelite 545-高真空グリース(重量比10:3または10:4)を充填剤として2mカラム(内径4mm)を用い,脂肪酸メチル試料0.01~0.02mlを注入して,カラム恒温槽温度120°,液体試料室温度170°の条件で,流速40~60ml/minのHeガスの導入によって良好な結果を得た.試料注入後の全低級脂肪酸メチルの分析時間は30分で完了し,かつ定量分析に対する可能性を満たすのに充分な高い分離能を示した.分析時間の許す限りにおいては高真空グリースの代りにジデシルフタレートを用いても良好な結果が得られた.実際に,このような条件下でバター及びマーガリン脂肪の低級脂肪酸の分析に供したが,良好な分離確認の結果を得ることができた.