日本農芸化学会誌
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一般高分子化合へのクロム錯塩の結合からみたクロム鞣製機構の推定
和田 敬三岡村 浩川村 亮
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1962 年 36 巻 4 号 p. 349-354

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抄録

コラーゲン中の官能基のクロム鞣時にはたす役割を知るために,コラーゲンのほかイオン交換樹脂,ポリアミド,セルロースパウダー, modified collagenを材料とし,これらとアクオおよび非アクオクロム錯塩との反応をしらべた.結果を示すとつぎのごとくである.
(1) イオン交換樹脂,コラーゲン,ポリアミドを通じて,実際の鞣製条件範囲内のpHでは非アクオカチオンおよびアクオカチオンの晶質性クロムはほとんど結合しない.
(2) アクオカチオンクロムは塩基度が進むにしたがって,コラーゲン,イオン交換樹脂共に結合量を増加し,両者は大体同じ傾向にある.ポリアミドは6アクオクロムのオール化の進んだもののみで結合量が大きい.
(3) アニオンクロムはアクオ基の有無にかかわらず,コラーゲン,イオン交換樹脂に低pHである程度結合する.
(4) セルロースパウダーにはいずれのクロムもまったく結合しない.
(5) コラーゲンのメチルエステル化によってカチオンクロムの結合量を急減し,脱アミノ化によってアニオンクロムの結合量を急減する.
(6) 以上の事実からコラーゲンのカルボキシル基がカチオソクロムの結合に関与していることは明らかである.さらにヒドロオクソ化合物とコラーゲンのカルボキシル基との反応についても考察を試みた.

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