日本農芸化学会誌
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絹糸紡績原料の醗酵精練(第10報)
好気性および嫌気性両細菌のプロテイナーゼの酵素化学的性質
今原 広次中浜 敏雄
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1962 年 36 巻 4 号 p. 331-335

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抄録

好気性細菌SE-19及び嫌気性細菌A-2のそれぞれ分泌するプロテイナーゼの酵素化学的性質を検討した.
(1) SE-19プロテイナーゼはAg+, Hg++及びPb++により強く失活し,またEDTA, oxalate及びcitrateによっても強く失活するが,この失活はCa++, Mg++, Ba++及びZn++の添加によって活性の回復が認められた.また熱による失活に対してCa++, Mg++及びBa++が保護的作用を示した.さらにsodium thioglycolate, cysteine及びglutathioneによって賦活し,過酸化水素及びブロム酸力リによって強く失活する.
(2) A-2プロテイナーゼはAg+, Hg++及びPb++により強く失活し, EDTAによっても強く失活するが, oxalate, citrateによってはそれほど強く失活しない.またEDTAによる失活はMn++によって若干活性が回復する. Mn++はこのプロテーイナーゼの活度を増加するが, SH試薬によっては活度が増加しない.熱失活に対してはMn++のみが若干保護作用を示した.
(3) 蛋白質に対しては両酵素ともセリシンを特に強く分解する.またゼラチン及び乳製カゼインに対しては両酵素が若干の相異はあるが比較的よく分解する.しかしてSE-19プロテイナーゼは大豆カゼインをよく分解するのに反し, A-2プロテイナーゼはヘモグロビンをよく分解する.またSE-19プロテイナーゼはcarboxypeptidase作用,及びdipeptidase作用においてA-2プロテイナーゼよりやや勝っているが, tripeptidase作用においてはA-2プロテイナーゼがやや勝っている.

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