日本農芸化学会誌
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動物皮の鞣性に関する化学的研究
(第3報) 皮コラーゲンとサリチル酸 (|-OH-COOH) 或いはスルホサリチル酸 (|-OH-COOH-SO3H) との反応について
佐藤 泰
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1958 年 32 巻 9 号 p. 656-661

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抄録

(1) 皮コラーゲンとガロタンニンとの反応を明かにするために,タンニンの基本的反応基であるOH基及びCOOH基をもつ化合物としてS. A.を,また更にHSO3基をもつ化合物として, S. S. A.を用い,これらの化合物と皮コラーゲンとの反応について実験した.
(2) S. A.の吸着量はHCl或いはNaOHの添加によって減少する.吸着平衡濃度と吸着量との関係は,実験した濃度の全範囲にわたってFreundlichの吸着式に適合しないが2部分に分れて適合し恒数nは0.9及び0.3であり,0.3の部分では略飽和に達しているものと考えられる.水による脱着は安息香酸の場合より困難であり,アルコール溶液中では吸着しないが50%アセトン水溶液中では水溶液中における吸着量の2/3を吸着する.以上のことからS. A.の吸着はそのOH基とCOOH基とのchelating構造と皮コラーゲンのNH2基及びその他の非解離部位との反応によるものと考えられる.
(3) S. S. A.の吸着量はHCl或いはNaOHの添加によって減少するが,添加量に対する減少の割合はS. A.より少い.吸着平衡濃度と吸着量との関係は,実験した濃度の全範囲にわたってFreundlichの吸着式に適合しないが,2部分に分れて適合し,恒数nは3.4及び0.25である 水による脱着はS. A.より更に困難で脱着が段階的に行われる.有機溶媒中における吸着は水溶液の場合と略同じである.以上のことからS. S. A.の吸着はその解離酸基及びOH基と皮コラーゲンの解離陽性基及び非解離部分との反応によるものと考えられる.
(4) 可溶性蛋白質によるS. S. A.の吸着量と吸着平衡濃度との関係は皮コラーゲンの場合に類似し,沈澱が完了するときは吸着量が一定となる.
(5) 皮の熱縮温度はOH基及びHSO3基よりも|-OH-COOH基による低下が著しく, OH基よりもHSO3基による低下が著しい.

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