日本組織適合性学会誌
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2021年度認定 HLA 検査技術者講習会テキスト
HLA DNAタイピング検査技術
東 史啓
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2021 年 28 巻 2 号 p. 83-93

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抄録

HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)はその豊富な多型性からヒトゲノム多様性の研究対象となるだけでなく,自己非自己認識の根幹としての機能から,免疫学的研究でも重要な位置を占める。さらにドナーと患者の適合性は移植や一部の血小板輸血において大きな影響を与えるため,適合度を評価するためのHLAタイピングは臨床上も重要な技術である。かつてタイピングは血清学的手法で行われてきたが,分子生物学的理解が進んだ現在はHLA遺伝子の塩基配列から遺伝子型(アレル)を決定する「DNAタイピング」が主流となっている。現在までに多くのDNAタイピング法が開発,試薬キット化されて身近な技術となったが,非発現変異による血清学との乖離や,アレルを確定できないambiguityの存在といった課題は完全には解消されていない。一方,HLAタイピングは移植や輸血だけでなく,免疫療法分野でのワクチン選択や薬剤副作用の予防といった目的でも用いられていることから,今後さらに重要性が増す技術であり,更なる発展が期待される。

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© 2021 日本組織適合性学会
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