遺伝学雑誌
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ファージおよび細菌の染色体と遺伝的組み換え
第34回 日本遺伝学会賞受賞講演
富沢 純一
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1962 年 37 巻 5 号 p. 357-362

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抄録

T-even ファージの染色体は一本のDNA分子からなり, 粒子中では秩序立った構造を取っている。感染すると染色体は一定の場所から一定方向で注入されるらしい。感染後DNAの合成はそれに先立つ蛋白質の合成を必須とするが, DNA合成のためには蛋白質の同時合成は必ずしも必要でない。蛋白質の同時合成なしに作られるDNAは完成したファージ染色体であって, このことは増殖しつつあるファージ染色体もDNAからなることを示している。
組み換えの研究は方法論的に組み換え型染色体の研究と組み換えの機構の研究に大別される。第一の方法から組み換えは「切断 bull;再結合」機構を含むことが結論される。第二の方法は組み換えがむしろ極めて単純な機構によることを暗示する。
細菌で見られる組み換え現象も本質的にはファージのものと同一の機構にもとづくものであろう。この遺伝現象の共通性はDNAレベルでの遺伝現象全般に通ずる原理の存在を予想させる。

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