日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第97回日本薬理学会年会
セッションID: 97_2-B-SL12
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特別講演
エピジェネティクス:運命と偶然のはざまの科学
*佐々木 裕之
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抄録

エピジェネティクスは個体発生をはじめとする様々な生命現象を制御するゲノムの高度活用戦略である。その分子的な実体は、染色体の複製や細胞分裂を経て維持されるDNAやヒストンタンパク質の各種修飾とそれらに基づく高次構造変化であり、これが発生過程における細胞の運命決定や、分化後の細胞の恒常性維持を担っている。一方、ランダムX染色体不活性化のように偶然性を取り込むエピジェネティックな現象もあるし、胎児期や発達期の環境ストレスによって誘導されたエピジェネティックな変化が、その個体の一生にわたる疾患感受性に影響を与える場合もある。すなわち、遺伝と環境の間をつなぐ分子的なメカニズムがエピジェネティクスである。また、通常は世代ごとにリセットされるエピジェネティック修飾の一部が、何らかの異常により次世代へ伝わるエピジェネティック伝達も報告されている。本講演ではエピジェネティクスの基本的なメカニズムに触れつつ、早期ライフステージにおける環境ストレスがエピジェネティクスを介して健康に及ぼす影響について紹介する。

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© 2023 本論文著者
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