日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第95回日本薬理学会年会
セッションID: 95_1-SL03
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特別講演
シナプス形成とリモデリング‐イメージングによる生理と病態の理解
*岡部 繁男
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抄録

生体内での神経回路の発達には、シナプスの形成、除去、再構築が正確に制御されていることが重要である。マウスの大脳皮質では、シナプスの動態に2つの段階があることが、2光子イメージングによって確認された。第1期(生後20日まで)では、シナプスのターンオーバーが高く維持され、第2期(生後3週間以降)では、シナプス動態が強く抑制され、大脳皮質の神経ネットワークとしての成熟が起こる。このようなシナプス動態の変遷は、神経発達障害や精神疾患の病態生理の背景にあると考えられているが、その正確なメカニズムはまだ明らかになっていない。私たちの研究室では、(1)神経回路やシナプス形成過程の多様なメカニズム、(2)シナプスの動的変化の過程での構造・機能連関、(3)脳疾患とシナプス機能障害の関係、に焦点を当てて研究を行っている。最近では、スパインシナプスの超微細構造を定量的に解析する方法や、スパイン内部の分子ダイナミクスを測定する方法など、神経回路を研究するための新しいツールを開発している。さらに、これらのツールは脳疾患の研究にも応用可能である。本講演では、これらの研究を紹介するとともに、精神疾患の病態をシナプス障害として理解することの妥当性と展望について議論したい。

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© 2022 本論文著者
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