日本薬理学雑誌
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Ifenprodilについての薬理学的研究
前田 幸英古川 達雄
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1975 年 71 巻 6 号 p. 585-595

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抄録

Ifenprodil(IP)の薬理作用をイヌ,ウサギ,モルモットならびにマウスを用いて検討した.1)イヌで,IP(0.1~1mg/kg)の静脈内投与によって,用量に応じた持続的な血圧下降,心拍数増加ならびに心収縮力増大作用を示した.このIPの血圧下降ならびに心拍数増加作用は脊椎イヌにおいても認められ,またIPの血圧下降作用はウサギではイヌに比べればやや強い傾向が認められた.イヌにおけるIPの循環器作用はatropine(1m/kg),diphenhydramine(5mg/kg)前投与ではほとんど影響されなかったが,propranolol(0,1mg/kg)前投与により心拍数増加ならびに心収縮力増大は完全に除去され,血圧下降はある程度抑制された.逆にadrenalineの血圧上昇作用はIP投与後は下降作用に逆転した。2)イヌの心肺標本では軽度の心拍出量増加,心収縮力増大,心拍数増加ならびに大動脈圧上昇作用を示した.3)ウサギにおける生体腸運動に対しては,一過性軽度の興奮作用を示し,摘出腸運動では中等濃度:(10-6)で軽度興奮,高濃度で興奮後抑制作用を示した.この興奮作用はatropineでは影響されず,その抑制作用はphenoxybenzamineおよびpropranololの併用投与によって軽度抑制された.またモルモット摘出腸管ではIP(5×10-5)は一過性軽度の興奮作用を示し,さらにhistamine興奮作用を著明に抑制した.4)モルモット生体気管支筋に対してはほとんど作用しないが,histamineの気管支収縮作用を著明に抑制した.5)マウスにおいて,IP(5~40mg/kg)の皮下投与で用量に応じて自発運動を抑制し,またthiopentalの睡眠時間を延長したが,筋弛緩作用は認められなかった.6)マウスの急性低酸素症に対する生存時間はIPの0.5,1mg/kgではほとんど影響を与えないが,5mg/kgでは短縮した.したがってIPはα遮断作用,軽度のβ作用ならびに中等度の抗ヒスタミン作用を有し,血圧下降,軽度の心臓興奮作用などの循環器作用,中等度の中枢抑制作用を示す薬物である。

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