日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:看護の現場に求められる実践的薬理学教育と人材育成
助産師の「アドバンス助産師」による継続教育システムと多職種連携教育
江藤 宏美
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 157 巻 6 号 p. 411-415

詳細
抄録

2015年から,All Japanで助産師の個人認証制度が開始された.日本の助産師免許は終身保持であり,更新制ではないため,免許取得後に助産師各自の経験や学習について示すことはなかった.しかし,ハイリスクの増加や高度で多様な医療の現状などから,助産師の実践能力強化の必要性を背景に,自律して院内助産が担当できる実践能力を認証するシステムとして,本認証制度が創設された.日本看護協会は,助産実践の戦略的強化の必要性を感じ,「助産実践のためのクリニカルラダー(CLoCMiP)」を開発し,助産師関連5団体(日本看護協会,日本助産師会,日本助産学会,日本助産師教育協議会,日本助産評価機構)は,現状が助産師の能力・実績向上を妨げているという危機感を共有し,合議で認証制度を構築することを決定した.CLoCMiPは,5段階で構成され,助産師のコアコンピテンシーを評価する.これらの動きと連動するように,助産師教育の方でも大きな改訂が行われた.助産師教育について,指定規則の総単位数が28単位から31単位に改訂され,2022年から適用されている.周産期のメンタルヘルスやハイリスク妊産婦への対応における臨床判断能力の充実,地域における子育て世代の包括的な支援において産後4ヵ月程度までの母子のアセスメントや支援が強化されることになる.このことと呼応して,全国助産師教育協議会では,望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラムを策定した.今後,客観的臨床能力試験(OSCE)やコンピュータを利用したテスト(CBT)の導入を視野に入れ,準備を進めている.学生のうちから,専門職としての意識と実践能力の獲得のための方法を学んでいく必要がある.日本の個人認証制度の開始から7年,現在,全国で約1万人の「アドバンス助産師」が,さらに専門的でより質の高い助産ケアを主体的に提供できることが期待されている.そのためには,助産師のリスキリングと多職種連携が重要な鍵となる.

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top