日本薬理学雑誌
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特集:NOとH2Sの研究の最近の動向
下部尿路組織における硫化水素の生理機能―下部尿路症状に対する硫化水素を標的とした治療戦略の可能性―
清水 孝洋Zou Suo清水 翔吾東 洋一郎齊藤 源顕
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2020 年 155 巻 2 号 p. 74-79

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抄録

近年,硫化水素(H2S)が一酸化窒素や一酸化炭素に次ぐ第3のガス状伝達物質であることが明らかにされ,神経伝達の修飾,血管平滑筋の弛緩など,多彩な生理作用を示すことが報告されている.一方で著者らの研究対象である下部尿路組織(膀胱および前立腺)におけるH2Sの生理機能については,少なくとも前立腺組織に関する報告は現状見られない.また膀胱組織に関しては,H2Sドナーによる膀胱平滑筋の収縮作用および弛緩作用いずれも報告されており,膀胱組織におけるH2Sの生理機能について詳細は未だ明らかではない.本稿では,ラットの膀胱および前立腺組織を用いた著者らの研究成績を中心に,下部尿路組織におけるH2S生合成酵素の発現分布ならびにH2Sの生理機能について概説する.また最近,膀胱機能障害に伴う下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)を呈する自然発症高血圧ラット(spontaneously hypertensive rat:SHR)を用いた著者らの検討から,LUTSに対しH2Sが新たな治療標的となる可能性について紹介する.

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