日本薬理学雑誌
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特集 医薬品開発における薬物性QT延長症候群回避のための基本戦略
QT延長をいかに判定すべきか:ICH E14に準拠した臨床試験デザインと統計解析法
渡橋 靖
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2009 年 133 巻 1 号 p. 14-18

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抄録

綿密な(thorough)QT/QTc試験は,被験薬の治療用量,最大曝露量の数倍の用量,プラセボ,陽性対照の4薬剤を比較する臨床薬理試験である.陽性対照は試験の分析感度を証明するために用いられる.主要なエンドポイントは,同じ時間に測定した被験薬とプラセボの平均値の差の,収集の全期間を通じた最大値であり,これはQTc間隔の日内変動,PharmacokineticsやPharmacodynamicsの特徴,統計学的性質を考慮して決定された.時点毎に被験薬とプラセボの平均値の差とその95%片側信頼区間を求め,全ての時点で信頼区間の上限が10 msを下回っていれば陰性と判断される.試験を計画する際は,QTc間隔の変動要因を考慮し,Fisherの3原則を適用して,バイアスとなる系統誤差を可能な限り除去し,偶然誤差を可能な限り小さくすべきである.ベースライン値による調整は,個体間変動や日内変動の影響を減じるために重要である.Time-matched baselineとPre-dose baselineがよく用いられており,一般に並行群間比較試験では前者が薦められるのに対し,クロスオーバー試験では後者も適切であると考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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