日本薬理学雑誌
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血液試料のルミノール増感化学発光検出による酸化ストレス測定法の標準化―生体内酸化ストレスの経時変化追跡を目的とした―
高山 房子江頭 亨山中 康光
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1998 年 111 巻 3 号 p. 177-186

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抄録

生体内酸化ストレス状態の経時変化を追跡するため試料を血液として,活性酸素種や過酸化物由来の励起種からの微弱光をルミノールの酸化発光に増幅させて検出する方法について標準化を試みた.ラット血液へのin vitro LPS処理により惹起したプライミング白血球からの活性酸素放出を,ルミノールを添加し0.025μg/mlのホルボールミリステートアセテートで刺激することで1%の全血を含む測定試料から発せられる化学発光(CL)を検出する測定法により捉えることができた.このCLはアジ化ナトリウムで消失し,高濃度のスーパーオキシドジスムターゼとカタラーゼでわずかに減弱したことから,主に次亜塩素酸がこの測定系におけるCLに関与することが示された.一方,組織の酸化障害の評価法として脂質ヒドロペルオキシド総量を測定するターシャルブチルヒドロペルオキシド(t-BuOOH)誘発の微弱光検出法について,ルミノールを添加した測定法の標準化を図った.6.67%ラット血漿,ルミノール10μg/mlおよび5μM t-BuOOHによる測定系において,血漿にホスファチジルエタノールアミンヒドロペルオキシド0~60nmolを添加した際のCL積算値は8.280~14.213×106count/60min/tubeと,添加量に比例した.また,ラットにLPSを腹腔内投与して6日目まで経時的に採血し酸化ストレス状態を検討したところ,惹起された白血球の活性酸素種産生能の上昇はLPS投与6時間経過では軽度であり,30時間経過前後では10~20倍以上増加し,その後漸減したが72時間後まで持続した.他方,血中の脂質過酸化も同様な亢進推移を示した.今回標準化した両測定には100μlの血液量で充分なことから,血中の酸化ストレスの検出とその時間的推移の追跡が可能であった.

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